czねこまみれcz

「招き猫亭」コレクションによるネコ画名作展
2008年3月1日(土)〜5月25日(日)
A.M.10:00-P.M.6:00(入館はP.M.5:30まで)
毎週:月・火休館 ※会期を5月25日まで延長いたします。
入館料/通常料金 500円

●お知らせ
5月17日(土)に美術館では催事を予定しております。
そのため、15時以降の 見学が困難になります。
ですから、一般のお客様でゆっくりと作品を鑑賞されたい方は
5月17日を避けていただいた方がよろしいかと思います。
お客様には大変ご迷惑をお掛けいたしますが、何卒ご了承下さい。


●NHK教育−新日曜美術館 アートシーン:3/23(日)放送 
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●コレクション可能な現代美術作品をご紹介


今回、当館としては初めての試みとなりますが、個人コレクター「招き猫亭」の収蔵作品を展示し、コレクターにスポットをあてた企画展を行います。
35年ほど前から時間を掛けて収集されたそのコレクションは、浮世絵やフジタにはじまり現在活躍中のアーティストに至るまで多岐に渡っていますが、中でも「ネコ」を主題にした作品のコレクションについては右に出る者はないと思われるほどの充実ぶりです。
アートと真摯に向き合い、好きな作品に囲まれ、心豊かに日々を過ごす様がこの展覧会(作品)を通じて伝わってまいります。また、アーティストの活動を下支えする個人コレクターの重要性についても、多くの方々に知っていただける良い機会になると考えております。
"ねこまみれ"のネコ美術"よろず屋"
 開店を祝うことば
 林 紀一郎:美術評論家 cz
   ネコとはいかなる生き物なりや?百科事典の調べでは、ネコ(猫)cat、domestic cat、広義には哺乳綱食肉目ネコ科に属する動物の総称、狭義では家畜化されたイエネコFelis Catをさす・・・と冒頭にあり、その後に"起源" "形態" "生態" "品種" "飼育方法" "健康管理" "民族・伝承(外国/日本)"という按配で長々と解説が続く。この他、ネコ学のさまざまな文献を漁って読んでみると、それなりのネコ雑学的な知識はつくのである。とはいうものの「ガクモン」のネコと違って「日常生活」のネコは、飼っている、いや共同生活している人間にとって、まことに名状し難い生きものなのだ。成る程、世に"ネコ型人間"と"イヌ型人間"が居て"イヌ型人間"のいうには、「ネコは3年の恩を3日で忘れる」忘恩の徒?だが、それに比べるとイヌは人間に忠実で、賢く、愛情を求めてくるから愛すべき生きものだ、などと賛辞を弄する。私事で恐縮だが、我が家にはイヌもネコも一緒に暮らしていて分かることだが、必ずしもそうとは限らぬ。敢えてネコのために弁護させていただくが、ネコは、その不可解さにおいて、不思議さにおいて、イヌの及ぶところではないのだ。ネコと暮らして26年の人間の実感である。
 ネコは仏陀の如く覚者であり、パスカルにも勝って深く瞑想する。ニーチェよりも生死を知り、反時代的精神を持ち、みずからの運命を愛する。チャップリンの如く孤独と悲しみを知る喜劇役者でもある。
 ネコはわれわれ人間を虚仮にし、黙視、嘲笑する。イヌの人間への媚び諂いを侮蔑する。ネコは哲学者であり、美学者であり、闘争と自衛の本能に秀で、エロス(愛)を求めタナトス(死)を観念する。矛盾撞着に満ちた偉大なニヒリスト(虚無主義者)であると同時に個人主義者、否自由主義者なのだ。そして、「猫は3月を1年とする」どころか、かの宝蔵菩薩の如く五刧思惟するのである。
 
 さてさて、このような偉大なネコに憧れ、熱中し、愛してやまないネコの絵のコレクターの異色のコレクション展が、2008年の弥生から皐月にかけての花の季節に開かれる。どこで?三浦半島は東岸・横須賀のカスヤの森現代美術館において・・・。
 たぶん、この美術館の特陳の部屋に鎮座する20世紀ドイツの前衛美術の巨匠ヨーゼフ・ボイスさんは、あの世で古今東西のネコ勢揃いの展覧会を眺め、両手を大仰に拡げ、目を丸くしているに相違ない。
 さて2008年のこの年は、いわゆる干支では一番目の"子"すなわちネズミ年である。年賀状のキャラクターの殆どがこの齧歯類の小型哺乳類であることはいうまでもない。それにしてもいったい、なぜ我等の年にネコの展覧会なのだ?十二支の仲間に、訳ありで加えて貰えなかった当てつけか?カスヤの森のチュウ公たちはそう思うだろう。気弱なネズミなら穴に隠れるだろうが、勇敢な奴なら、それこそ開き直って文字通り"窮鼠猫を噛む"ことにもなりかねない。ともかくネコとネズミ・・・起源的にも民族的、伝承的にも因縁ある両者、コントラストの妙味豊かなこのネコ美術コレクション展に心からの祝辞を述べる次第である。
   さて、本展の肝心のコレクターだが、企画の趣旨として覆面のオーナーということであり、この点に本展の特色がみてとれる。ただ言えるのは、世間にネコ派、ネコ気違いは浜の真砂ほども存在するだろうけれど、ことネコ美術の収集にかけては、この覆面収集家の右に出る者はあるまい、と思われるのだ。成る程、大金持ちで、金に飽かして買い集める収集家は存在しよう。だが、本展の収集家はいささか趣を異にする。いわゆる長者番付に載るような存在とは無縁の、ごく普通の一市民であり、日常生活も贅沢を避け、倹約を心がけて、例えば、海外旅行や宝石やブランド品などに費やす位なら、その分をネコの美術の収集に当てる、といった有様で、しかも購入は分割払いとのことである。
 このようにしてネコ美術熱中症に罹り、ひたむきに収集した結果、そのコレクションの内容は"ねこまみれ"の"よろず屋"と銘打つだけに、時代は江戸から平成まで、種類は木製の招き猫にはじまり、版画、油彩、水彩、アクリル、テンペラ、ガラス絵、ドローイング、コラージュ、日本画からブロンズ、オブジェ、立体、さらに浮世絵(肉筆・版画)に至まで多種多様、また作家も、西欧近代版画の巨匠たち――ビアズリー、スタンラン、ベレット、フィニー、イカール、一方国内ではエコール・ド・パリの藤田嗣治はじめ、中村直人、佐藤敬、斉藤真一ら滞欧作家や、岸田劉生、中川一政、木村荘八ら草土社の画家、その他、熊谷守一、猪熊弦一郎、永瀬義朗、関野準一郎、清宮質文、斎藤清、多賀新、池田満寿夫、靉嘔、秀島由己男、小泉淳作、横尾忠則、藪内佐斗司、山本容子、安元亮祐、若江漢字、呉亜沙らに至まで、ジャンル、種別、手法を問わず、まさに"ネコ美術曼荼羅"の世界が開示されるのである。覆面収集家の正体はいずれ明かされることであろう。仄聞するところによると、本展のコレクションの覆面の主は、収集した作家と作品についてアマチュアながら徹底的に勉強し、理解を深めようと努めるらしいのである。
 弥生の春から皐月の薫風の季節、カスヤの森に"ネコ賛歌"の大合唱が響きわたるであろう。その妙なる学音に耳を傾けたいと切に願う次第である。


展示作品
靉 嘔
穐月 明
生田 宏司
池田 満寿夫
石川 寅治
井上 洋介
井上 長三郎
猪熊 弦一郎
岩織 治
浮田 麻木
大村 廣陽
大森 暁生
奥谷 博
織田 廣喜
門坂 流
金子 国義
岸田 劉生
木内 克
木村 荘八
熊谷 守一
呉 亜沙
小泉 淳作
小絲 源太郎
合田 佐和子
小林 ドンゲ
國司 華子
斎藤 清
斎藤 真一
佐藤 敬
杉山 寧
鈴木 敦子
清宮 質文
関野 準一郎
高橋 弘明
多賀 新
竹内浩一
竹久夢二
辻村和美
十時孝好
中佐藤滋
中村直人
永瀬義郎
成田朱希
西誠人
濱田知明
秀島由己男
平澤重信
福島武山
藤田嗣治
松井ヨシアキ
南桂子
村井正誠
安元亮祐
藪内佐斗司
山下英二
山下清澄
山城隆一
山中現
山本容子
與倉豪
横尾忠則
若江漢字
国貞
国周
国利
国芳
春潮
豊国
芳藤
 

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