江口 週
- 個展によせて
ドローイングについて
1996年に、「記憶の解体一忘れられた廃屋から」という展覧会をもったが、これは、解体された古い木造の商家の建築部材の仕口などの時代を経た美しさに刺激されて彫刻作品とドローイングにイメージとして再生したものであった。しかし、その後、構築的な木組み的な彫刻制作に戻っていったのは現代彫刻の宿命なのかもしれない。そのときもそうであったが、色彩に憧れて水彩を数多く描き発表してきた。彫刻家のデッサンは、作品の発想のイメージの記録であるが、それを遡ってその内面の世界、あるいは表現の起点となる対象を探りたいと思った。今回のドローイングは、廃屋に変えて、廃墟からそのイメージを得たいと思って今年から始めたものである。その場合、何もない砂漠ような単色の世界に戻りたいと考えた。地表に遺された大きな穴、あるいは長い溝は、彫刻の原風景のように思われた。
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