倉重光則
―不確定性正方形―
Mitsunori kurashige

2000年3月31日(金)〜5月28日(日)


1946年福岡県生まれ
神奈川県三浦市在住


“倉重光則について”
60年代後半より美術的活動を始め、今日まで地道な発表を続けている倉重光則の個 展である。
新聞紙上においた蛍光管の光で、情報の媒体となるべき活字が、その 光の明るさによって文字自体が消し去られるという、ショッキングな体験を作家活動 の原体験としているというように、今なお蛍光灯やネオン管にこだわり続け作品を作 っている。
今回も鉄に彩色された平面のエッジからネオン管の光が漏れ、現実の 光でありながら、平面作品を虚像として浮かび上がらせている。本展は平面中心の展 示となっている。
〈不確定性正方形〉
倉重光則

 明らかにこの絵はいわゆる絵ではない。だから同時代=現在のいろい ろの表象と共通点を持ちながら、ある部分において奇異を全うする。前提とか制限も なく生産される正方形(正方形に近いもの、似ているもの、あるいは絵画の枠組)。 ワクの中に描かれるべき対象としての意味や想像力とか空想力などの観想力はすべて 無に帰し否定される。予定調和としての安全さの中で従属するような空間を作成し、 遠近法的消失点を確定することが問題なのではない。消失点を消失すること、無原則 的な錯綜と戯れの中で、形象と背景との共犯関係を明るみに出し、図式的な時空の基 盤を逸脱し、すり替えること。
 いま、ここという未知の時空の中で揺れ動き、 置換されていく空間、それは到る処で強度が流動し脈打ち続ける時空である。始まり も終りもない。一連の孤立化された無数の部分から成る領域、それら一連の領域に対 してその瞬間、瞬間にその都度、接近手段を鍛えあげること、いまここの重層的な交 錯の中で自らの位置を評定しようとする盲目の実験体=不確定性正方形。


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