循環しないレモンイエロー
カスヤの森現代美術館にはヨーゼフ・ボイスの重要なコレクションが多数あるが、 中でも黄色い電球とレモンを結合させた「カプリバッテリー」は、ボイスの思想をシ
ンプルに表象した特別な作品だと思う。
今回の展示作品は、全てこの「カプリバッテリー」を起点に制作し、同作も合わせて展示する。
だが僕は綿密なリサーチの上にボイスの思想に迫るような今時のやり方を試したいわけではない。むしろ勝手な思い込みによってボイスの方法論を読み替え、または積極的に誤読し、何か未実験の化学変化のようなものが起こせないか、と考えた。
またこの「カプリバッテリー」の構成要素、レモン、電球、黄色は、かつて僕自身が作品の素材として使用していたものでもあり、単にボイスの問題の借用ではなく、自分自身の素材とイメージの問題も改めて掘り起こしたい。そしてボイスの超人的な造形や、どこかいかがわしさを弄ぶような方法論を複製し、言わば「真正のフェイク」なるものを捏造したいと思う。
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